『痕〜きずあと〜』(2000.8.28)(2001.3.4 加筆)

今更シリーズ第2弾は『痕』です。

1996年に『雫』『痕』と2作出されていて、
「Leaf」最後のダーク路線と言われた作品です。
シナリオ担当は高橋龍也さん。原画担当水無月徹さん。

『痕』は「鬼」の話をベースにした、主人公の耕一と柏木4姉妹の話です。
簡単に言ってしまうと先祖代々から受け継いできた血によって普段は抑えられている
もうひとつの人格が呼び覚まされ、事件を引き起こします。
自分の中に別の人格がいる……そいつが女を狩る生物だとしたら。
そんな不安と恐怖が巧く描かれていたと思います。

この作品の巧い所は、キャラがしっかり立っている所でしょう。
一回のプレイ時間はすごく短いにも関わらず、
千鶴、梓、楓、初音のそれぞれがいい味だしてました。
特におっとりとした長女の千鶴は人気が高いです。
普段のあの性格と、後半のあの名言のギャップがやっぱり効きましたね。

一番驚いたのは、一度クリアすると、新たなフラグが立ちあがり、
別の視野から事件を多角的に見ていくことが出来ることです。
それぞれのシナリオをやっていく上で、徐々に事件に関する謎が解けていき、
最終的に、初音ストーリーですべてがわかるようになっています。
そのシステム面では、ピカイチですね(^^)

設定的にも展開的にも、Hシーンが無理なく展開されていて、
まさに18禁だからこそ出来た作品だと思います。
取って付けたようなHシーンを付ける最近の萌えゲーとはその辺が
違うのかもしれません。その点が評価が高いのかも。
ただ、4姉妹の中で事件の最大の被害者である梓がなんか可哀想でしたが。

個人的にお気に入りのキャラは、初音ちゃんです。
健気すぎです・・・どうしてって位に(^^;
過去との因縁もありますしね。強烈でした。

とにかく、96年当時としては画期的で飛びぬけた作品だったと思います。
また高橋さんの何でもない日常を巧く描く能力や、Hシーンを軽視しない
スタンスがこの作品の完成度を高めたと考えられます。
あと、もともとはPC98用から移植したものなので16色ですが、
逆それが作品の雰囲気を出しており、背景などもよく雰囲気が出ていると思います。

完成度の高いこの作品、プレイしてみないと後悔するかもしれません。
私ももっと早くプレイしておくべきだったです。
その割には点数が悪いと思われる方もいるかもしれませんが、
他の作品との相対評価なのでご了承ください。

『痕』を契機として、翌年の『To Heart』で現在の業界の主流を生み出すことになります。
当時の雑誌を引っ張りだして来てみても、ろくなものはないです。
『下級生』『YU-NO』『鬼畜王ランス』などのいわゆる大手の作品以外は
話にならないような時代だったので、それこそ大挑戦だったと思います。
その辺の苦労などは、「TINAMIX INTERVIEW SPECIAL Leaf 高橋龍也&原田宇陀児」
述べられてます。知らない方は参考までにどうぞ。

最後に、蛇足みたいなものですが、『痕』を全ルートをクリアすると
ある場面からおまけシナリオに突入出来るのですが、青紫さんが書いた
そのシナリオに盗作疑惑が浮上しました。
2chで相当叩かれたりしていたのですが、2001年3月1日にLeaf側もそれを認めて
お詫び文をアップしました。詳しい経緯はこちらからどうぞ。
実際に該当部分を比べてもらえばわかると思いますが、どう見ても、
これはパロディのレベルではなく、人物名を変えただけの丸写しです。

◇痕〜きずあと〜

作者:Leaf
シナリオ:18
キャラ:15
CG:15
音楽:17
システム:18
総合点:83「A」

※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。


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