『青空』とクトゥルー神話
(2000.11.9)(2001.6.21 加筆)
【H・P・ラヴクラフト『ピックマンのモデル』】
(創元推理文庫「ラヴクラフト全集4」収録)
画家、リチャード・アプトン・ピックマンが失踪した。
病的かつ冒涜的な画風を天才的な技巧でもって描ききる画家だった。
最後にピックマンと会った男は語る…貧民街のピックマンのアトリエで見たものを…。
八車斎臥…モロにピックマンじゃん(涙)。
ピックマンのモデルがアレなら、八車斎臥のモデルは…あうあうあう…。
【C・A・スミス『彼方からのもの』】
(青心社「暗黒神話体系シリーズ クトゥルー3」収録)
芸術家を題材にした作品をもうひとつ。八車斎臥のキャラクターを除けば、
ネタ的には『ピックマンのモデル』よりもこっちのほうがこのゲームに近いかも。
だからあらすじは書きません(笑)。ところで全然関係ないですが、
C・A・スミス(クラーク・アシュトン・スミス)のヒューペルボリア関係の
作品(『ウボ=サスラ』『七つの呪い』『魔道士エイボン』『アマタウスの遺言』)
は、クトゥルーのくせに笑えるというミョーな短編群なので個人的には大好きです。
あ、『彼方からのもの』は正統派の怪奇小説ですよ。笑えません(笑)。
【オーガスト・ダーレス『風に乗りて歩むもの』】
(青心社「暗黒神話体系シリーズ クトゥルー4」収録)
いあ!いあ!いたか!いたか、ふたぐん!風に乗りて歩むものの外見描写に注目。
クトゥルーの邪神もほとんどダイダラボッチ扱いである(涙)。
<以上、引用>
以上を読んで見て、ますます奥深さにハマル(笑)
内容を確かめる為、上述されているラヴクラフトの本を始め、関連のある資料を購入。
原典に実際に目を通してみると確かに『青空』にはこの概念がそのまま使われているようです。
公式ビジュアルブックに目を通してみると、鷹取兵馬さんはラヴクラフトの影響を受けているらしく、
私の勝手な妄想ではないと言うこともわかりました。
パロディと言えばパロディだけど、クトゥルー神話を知ってる者は当然のこと、
私のように知らなかった者でもあれほど楽しませてくれたのだから、
『青空』におけるクトゥルー神話体系の利用は巧い使い方だと思います。
このルーツを辿ろうとすると、とんでもなく世界が広いです。
また、彼の作品の殆どが夢で見た狂気の世界を題材にしている点が面白いです。
とはいえ、ここまで後の人に信奉されているのは、彼のオカルトに関する知識が
尋常ではなかったことが考えられます。いったいどこでそんな知識を得たのだろう、
と彼に関しても考察すべきことが色々とあって面白いです。
話の展開は、ある程度パターン化されています。
主人公は最初、自分の周りで起こる不思議な出来事
(這い寄る混沌)を頑なに否定しているのですが、
最終的に自分の目で見て体験して、その恐怖に恐れ慄く、というものです。
ラヴクラフトが描こうとした純粋なる闇の世界は難解複雑で読みにくく感じました。
彼の作品の後期に入ってくると、クトゥルー神話の元になった作品が徐々に出始めて来ます。
「クトゥルフの呼び声」(ラブクラフト全集(創元社)第2巻収録)がその最初ではないでしょうか?
その後、彼はダーレスと知り合い、互いに協力しながらクトゥルー神話体系を作り上げていきます。
それは多くの作家の心を掴み、彼らもまたこの神話体系を完成させるべく執筆を続けています。
日本では菊地秀行などが代表的なクトゥルー作家です。
クトゥルー神話に関して詳しい紹介をしようとすると膨大な量になってしまいます。
興味を持たれた方は下手に私の説明などを聞かずに、自分で関連文献を探してみるか、
手始めにここ辺りへ飛ぶことをお勧めします。
話は変わりますが、レビューにて採点した得点について、
現在注目を集めている『AIR』よりも『青空』の方を高くしたのは、
全体としてすごく綺麗にまとまっていたという点が大きいです。
『AIR』における翼人伝説と呪いは、晴子と観鈴のラストの感動を盛り上げる為に
作られたものでしかなく、実際に感動したし涙も止まらなかったけど、
それが故に作品をラストまで終えた後に「結局、SUMMER編ってなんだったの?」と
骨が咽喉につかえたような感じにさせる原因になっているのだと思います。
本来一体であったDREAM編とAIR編に深みと感動を持たせる為に、
急遽SUMMER編を追加という形を取ったのでしょうが、
その為に全体としてすごく歪な形に出来あがってしまっています。
SUMMER編は、もう少し手を加えれば独立した作品としても十分に発売出来る
レベルに達していると思います。
それを合体させてしまったが為に、佳乃と美凪ストーリーは単なる前座として
あしらわれる結果となってしまい後味が悪くなってしまったのでしょう。
中途半端であることが、互いのシナリオを台無しにしている感じです。
私が感じたように「母と子の物語」が『AIR』の主題であるとしたら、
あの作品で「いったい何を表現したかったのか」が見えてこないです。
それを考えると『青空』のまとまりの良さは飛びぬけていると思います。
確かに完璧に納得の行くという所まではいかないけど、
剣乃ゆきひろ(管野ひろゆき)氏の『YU-NO』の完成度の高さに並ぶような感じがします。
こう考えて見ても、『青空』は2000年のトップ作品と言えるのではないでしょうか。
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