アトラク=ナクア 『アトラク=ナクア』
(2000.8.27)(2001.3.4 加筆)

今更シリーズ第1弾『アトラク=ナクア』です。

アリスソフトの『アリスの館4・5・6』に収録の作品として、1997年発売。
(現在、廉価版として単独で再販しています)

シナリオ担当はふみゃさん。
原画担当おにぎりくん、音楽担当shadeさん

過去の日記を見てみると、1999年の3月頭に、SYS3.5開発キットが欲しい為に、
友人から『アリスの館4・5・6』を貰ってました。
あれから曲だけは聞いていたものの今までやってませんでした(私、こういうことは多いです^^;)

感想は、ハマりましたの一言。(^^;
独自の世界観に完璧に呑まれ、珍しく唸りました、はい。

何百年も生きてきた女郎蜘蛛の初音が主人公で、彼女は宿敵である銀(シロガネ)に
傷を負わされ、街に逃げ込んで来ます。そしてある高校に棲み付くことに。
そこで出会ったのが、弱々しく友達もいない、不良供に強姦されていた深山奏子です。
初音はたまたま奏子を助けたのだけど、奏子は初音の強さに惹かれていきます。
女同士ということで基本的に異常な世界に見えるのですが、
プレイしている時にはそのような違和感は感じられません。
むしろ、何事も無い平凡な日常の裏に潜めく闇の世界に引き込まれます。

とにかく、この作品の素晴らしい所は、ふみゃさんの文章力です。
主人公の初音のかっこよさには、とにかく心躍ります。
他のキャラもそれぞれの性格がはっきりしていて、
内容にも違和感が無く、素晴らしい以外に言い様がないです。
あと視点がどんどん入れ替わって行くのですが、文章の巧さ故か、
それがすんなりと受け入れられて、ほんと唸りました。
加えて、その場面にあったshadeさんの光る音楽が更にそれを引き立てていて、
とにかく随所随所の演出が巧いです。

私は「男キャラは別にどうでもいい、萌える女の子さえいればいい」というような考え方
はしない人間なので(『夢の少女』でもそうです)、なんか葛城和久が一番気に入りました(^^;
なぜか奏子を励ましてやりたくて仕方が無いと言う気持ち、
そこから自然と好きになるというような、そんな流れがよかったです。
異様な世界の中、ひとり穏やかに生きているって感じもすごいしました。
心が和んだ感じです。でもそれはバッドエンドであるところがまた哀しい。

あと、兄を想う、つぐみの章もよかったかな。
一人の人間の命運をすべて自分(=初音)が握っているということもあって、
とにかく可哀相で、贄にだけはしたくなかったです(^^;

個人的には、最終章の展開がちょっと気になったかな……
shadeさんの強烈な3部作が襲い掛かってくるので凄くいい場面なのですが、
それにしても何か初音が急に弱々しくなってしまったような感じがして
なんとも言えない気分でした。

システム的な面としては、さすが「SYS3.x」を使っているということもあって、
その安定性と処理速度は大したものです。
ただ、shadeさんがスクリプターをやっているという面もあって、
CG・音楽鑑賞モードや、セーブシステムに関してはちょっと足りない部分も
あったような気がします。

全体としては、とにかく一度やってみて損はないです。
完成度としては、数あるノベルゲームの中でトップ3に入ると思います。

◇アトラク=ナクア

作者:アリスソフト
シナリオ:18
キャラ:20
CG:18
音楽:19
システム:18
総合点:93「S」

※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。


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