誰彼
『誰彼』
(2001.5.9)
第10弾は「Leaf」の久々の新作「ACTIVE DRAMATIZE NOVEL」『誰彼』です。
『まじ☆アン』以来沈黙を守っていたリーフ大阪が久々に出した作品。
シナリオ担当は竹林明秀(青紫)さん。原画担当カワタヒサシ(ら〜・YOU)さん。
帝国陸軍特殊歩兵部隊所属の坂神蝉丸はある日、目覚めると
地下室で石造りの棺に閉じこめられていた。
その上、身体の自由がまるで利かない。
なぜそうなってしまったのか、彼にはまったく状況がつかめない。
やがて仲間が棺のふたを開けるのだが、様子がおかしい。
突然蝉丸に襲いかかってきたのだ。
蝉丸は動くことができない!
偶然地下室に迷い込んだ月代と夕霧がきっかけで
窮地を脱した蝉丸は、二人から驚くべき事実を知る。
現在は蝉丸が生きていた昭和19年から50年以上の歳月が流れた、
平成1X年であるという事実を。
そして現れる、自分と同姓同名の老人。
その老人は自分自身が変わり果てた姿なのか。
時間を超えてしまった謎を解くべく、蝉丸は調査を開始する。
だが、彼に襲いかかる、かつての僚友たち。
その目的とはなにか。
根強い人気を誇る『雫』『痕』を踏襲した濃いノベルが帰って来る!?
と期待していたのですが、いざ発売となってみると、なぜかあまりいい噂は聞かない。
なんでも、6時間でフルコンプ出来るほどシナリオが薄く、つまらないらしい。
そのあまりの酷さに業を煮やした2ちゃんねるで「552文書」(Leaf 内部事情)が暴露された。
なんでも高橋・水無月のゴールデンコンピは既に退社しており、
今回の企画者である、萌えに追随しないというコンセプトで進めて来た原田宇陀児さんが
途中退社してしまった後、後任として青紫さんが受け継いだものらしい、とのことである。
2ちゃんねるでは面白がって過剰に批判されることが多いのだけど、
ここまでの叩かれようは一体どうしたものなのだろうとずっと気になっていた。
今回、ようやく知り合いが手に入れたとのことで、早速少しやってみたのだが、
開いた口が塞がらないとはこのことなのだろうか。
一体、なんだこれは!(怒)
全編つっこみ所満載の物凄い話になってました。
いや、悪評の先入観を持ってやってるから、そう思えるんだ。
落ち着け。落ち着くんだ。落ち着いて客観的な目でもう一度やってみよう。
ということで、改めてプレイし直してみる。
あらすじを読み直してみると確かになかなか面白そうな感じ。
曲だけ先に聞いてみても、なかなかいい感じ。
……が、実際に始めてみると、嘘八百言ってるじゃないか!
「蝉丸は動くことができな」かった理由も、
「彼にはまったく状況がつかめな」かった理由も一切語られず、
「その老人は自分自身が変わり果てた姿なのか」と疑問に思う以前に
お前のクローンだと即答してしまって面白くもなんともないし、
「彼に襲いかかる、かつての僚友たち」の目的がわかる以前に、
具体的な紹介も過去も何も語られないまま終わってしまうわ、
「時間を超えてしまった謎を解くべく、蝉丸は調査を開始」したはずなのに、
一切謎も解けないまま適当に終わってしまうわ、
とにかく、いい加減の中途半端とはこのことをいうのだろうかと、怒り心頭。
その上、今回「ACTIVE DRAMATIZE NOVEL」と銘打ったチップアニメの部分は、
『ストU』のパクリなのか、戦闘シーンではまだその効果を発揮してるものの、
立ち止まって海を眺めてるシーンでも不気味に全身呼吸を続ける蝉丸達はコワすぎ。
早送りしてたらその不気味さは200%倍増です(泣)
個人的にろみゅさんの絵は嫌いじゃないですが、あれはSDキャラだから可愛いのであって、
6、7頭身の人間を描くには不向きなんじゃないかと思わずにはいられません。
普段の長所であるベタなセル塗りは手抜きに見えるだけで、逆に短所になってます。
せっかくの見せ場のはずのシーンもすべてぶち壊しですよ、これじゃ。
あと、directXを使っているせいか、細かな画面効果が色々とあってよかったのですが、
その反面、早送りするのにも時間がかかるし、その間にフリーズすることが結構ありました。
(これはうちのPCのせいかもしれませんが。K6-V400、メモリ512MBなのに)
やはり問題なのは、やはり説明不足のまま進む独り善がりな展開。
ヒロインであるはずの月代、夕霧、高子のいずれにせよ、
キャラ造形がしっかり出来ていなし、まったく感情移入が出来ない。
プレイする前から相当感情移入していないと好きになれないのではないだろうか?
個人的に『WA』でら〜・YOUさんの絵にやられた人間なので、
今回も絵は嫌いじゃないし、塗り込み方もかなりしっかりしていたんだけど、
ヒロインに感情移入が出来ないだけに、まったく可愛く見えない。
一番訳がわからないのは、主人公の蝉丸。
軍人らしく、余計なことはしゃべらない硬派な感じを出そうとしたんだろうけど、
いくらなんでも説明足らなすぎです。科白は少なくとも、心話くらいもっと
しっかり書いてくれないと読者としてはさっぱりわからないです。
1節(4行)しゃべっただけで「少ししゃべりすぎてしまったようだ」ってどういうコトですか?
更に大抵のHシーンも精神的疾患の一種だとか言って、結局嘘をついて
レイプしたようなものだし。夕霧の場合など、それによって初めて蝉丸を意識したのはいいが、
そのまま進めて行くと彼女は捨てられたままで、捕まった月代を救ったあと、
「俺はこれからも月代を護る。それが俺の使命だ」とか言って終わってしまうのは
かなり無茶があるような気がしてならないんですが。
トドメは、Leaf 恒例のおまけシナリオ。
あまりにサムすぎて、もはや笑うことも出来ず数分固まってました。
せっかく曲はよかったのに、おまけで変に使われたせいか、一気に印象悪くなったし。
しかも、早送りしようと思っても出来ないし、終わったかと思ったら、
PCまで固まってしまってセーブデータ(総合セーブのみ)が飛んで初期状態に戻ってしまう始末。
もはや、やる気も起こりません。
総評としては、あまりに勿体無いということに尽きます。
BGMもCGもプログラムも相当レベルが高いのに、シナリオがすべてを台無しにしてる感じです。
個人的には、こんなゲームだけは作るまいと良い教訓になりましたけど(^^;
設定としても面白いし、もっと練り込めば、かなり化けたと思います。
ああ、かつて名作を生み出したLeafはどこへ行ってしまったんだろう。
そう思えずにはいられない作品でした。
◇誰彼
作者:Leaf
シナリオ:8
キャラ:10
CG:17
音楽:15
システム:8
総合点:58「D」
※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。
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