I'm 〜心の向こう側に〜
『I'm 〜心の向こう側に〜』
(2004.8.17)
ファイルサイズ100MB超の学園恋愛アドベンチャー。
物語は平凡な学園恋愛モノかと思いきや、実際にプレイしてみると一風変わった設定が大きく横たわっています。
ある日突然、主人公の頭の中に別の人間の声がし始めるのです。
その彼には体はなく、あくまでも主人公の頭の中にだけいる存在。
その「声」がタイトルにもなっている「I'm」(ネタバレになってしまうのでこういう表記に留めておきます)という主題に大きく関わってきます。
攻略キャラクターは全部で3人いるのですが、幼馴染+妹、天然+美人、お転婆+乙女としっかりキャラ分けが出来ています。
脇役も個性的で生き生きとしています。
立ち絵は、アングルによって時々微妙な顔になるキャラクターもいましたが、基本的にはレベルが高いです。
イベントCGの完成度はシーンによってまちまちでしたが、ゲームをしていくうちに特に気にならなくなります。
文体は全般的に読みやすく、綺麗に書かれていると思います。
文章ウィンドウやカーソルアイコンなどにも気を配っており、並の同人ソフトを超えた雰囲気を醸し出しています。
まずは幼馴染の妹系キャラクター杜宮柚香をクリアしました。
萌えゲーにありがちな展開で進み、お約束も盛りだくさん。
その上、主題である「I'm」の謎も伏線を張りながらプレイヤーに興味を引き立たせています。
久々にコテコテの恋愛ゲームやった感じがしてかなり面白かったです。
次に華島さくら先輩をクリアしたのですが、思いっきり泣けました。
ラストはいい年して、ボロ泣き(苦笑)。
こんな発想というか展開で来るとは思っていなかったので完全に白旗状態。Key系の展開に少し通じるものがあります。
柚香ルートでは、物語の主題である「I'm」がルート自体にも密接に関わって来ていましたが、さくらルートではそれを前提としたような応用的な、それでいてそれを超越した展開のさせ方をしていた点に脱帽いたしました。
最後に、藤條朝季ルートをプレイしたのですが、予想と違った展開をして、なかなかよかったと思います。
彼女のルートでの「I'm」の扱い方は、発展型と考えられます。
3つのルートをプレイすることで、主題がはっきりと見えてきます。
主題がきちんと筋の通った形で表現されている点が特に評価高いです。
プレイする順番は、個人的に「柚香⇒朝季⇒さくら」がいいかと思います。
主題である「I'm」の扱い方が「基本⇒発展⇒応用」と進んでいく為です。
その上、さくら先輩はストーリー的にも一番良いと思いますので一番最後にプレイするのがおススメかなと思います。
惜しむべきは本編の内容ではなくて、システム的な面だと思います。
画像や音楽データを圧縮せずにそのままフォルダに格納しているせいで不必要にファイルサイズが増大している上、ファイル数も多く不恰好です。
CGモードでの制御が甘いため、バグっぽい動きをしています。
スクリプトエンジンに高橋直樹氏の「NScripter」を使っているのですが、もう少し丁寧にプログラムを書けば回避できたような気もします。
逆に言えば、内容が良いだけにこんな所で足を引っ張っていて勿体無なさすぎます。
更に、完全版を完成させる前に頓挫してしまった作品らしく、その辺もきちんと完成させた状態で公開していれば、
前代稀に見る完成度の同人ゲームになっていたと思います。
◇I'm 〜心の向こう側に〜
作者:Tea-Room
シナリオ:19
キャラ:17
CG:16
音楽:17
システム:13
総合点:82「A」
※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。
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