Beyond the Summer
『Beyond the Summer』
(2004.10.2)
<さわやかな青春が味わえる逸品>
シンプルで後味の良い青春恋愛アドベンチャーです。
あらすじはそのまま引用させていただくとこんな感じです。
晴れた空、焼けつく太陽。
雨だというのに、夏の予告編のような天気…。
オレは…今日もいつものように学校へと向かう。
いつもの毎日は、いつものまま。
そんな変わりのない毎日にうんざりしながらも、
どこかで、あきらめてるのかもしれない…。
そんな時、ふとある考えが頭をよぎる…。
「このまま、どっか行くか…」
もしかしたら、なにか見つかるかもしれない、
そしてオレはいつもの駅を…乗り過ごした。
そうして何が見つかるのだろう。
歯が浮くほど恥ずかしい…そんな青春ラブストーリー。
主人公(名前は任意で設定可能)は人間関係に対して、少し臆病な面があり、誰に対しても「広く浅く」を心がけていました。
そんな彼が何の変哲もない毎日から一歩だけ前へ踏み出す決意をする所からこの物語が始まります。
この作品は「カレイドスコープ」と同じようにキャラクター絵が一切登場しないものの、性格付けがしっかり出来ています。
その分、自分で想像できる幅が広がったのでその点はプラスに働いていると感じました。
キャラクターはプレイした順にいくと、まずは委員長である渡瀬陽子。
他人の前ではいつも笑顔を絶やさず、自分のことよりもまず他人のことを優先してしまう女の子。
でも、本当は色々な悩みを抱えていて……。
このタイプの女の子の等身大の姿がよく描けていたと思います。
2番目が、大学で民俗学を専攻している支倉渚。
姫浜海岸に古くから伝わる「姫浜伝説」の謎を調べている所で主人公と出会います。このルートは特にしっかりできており、渚がなぜこの伝説を調べるようになったのか、という過去と伝説自体が示している本当の意味がうまくマッチしており、非常に良かったです。
一緒に伝説を調べて推理していく中で恋が発展していくという過程も楽しかったです。
3番目が神主の娘である御子柴悠里(みこしばゆうり)ちゃん。
性格は素晴らしく純粋。誰とでも仲良くなりたいものの、学校での「不自然な群れ」意識についていけず、苦しんでいます。
悠里ちゃんのルートはとにかく純粋さを描きたかったのかな、と感じました。後半の彼女の照れっぷりが可愛いです。
ラストは、女の子らしくない自分と葛藤する三崎ひろか。
よくあるボーイッシュな女の子の話であるかもしれませんが、グッドエンドで主人公が出した結論には非常に好感が持てました。
すべてコンプリートして感じたことは、主人公の性格付けが各ルートで一貫しており、まったく違和感がなかったことです。
この作品で伝えたかった「もう一歩踏み込めばすべてが変わる」という前向きな姿勢ですべてのルートが完結している為、クリア後に十分すぎるほどの爽快感を得られました。
ただ、各ルートに対して4種類のエンディングが用意されていたため、エンディングリストをすべて埋めるためには、選択肢を総当り式にプレイしていかなければならず、その作業に少し骨が折れました。
難易度は低いので普通にプレイしていくとグッドエンドになる分、バッドエンドを探しにわざわざもう一周しなくてはならないというのが何よりも辛かったです。
背景は素晴らしく綺麗な写真を使っていて、好感触です。
音楽も曲数が多く、作品の爽やかさに磨きをかけています。
(タイトルの曲が「夏」という感じがして特に好きです)
画面構成も作風に合うようにシンプルにきちんとまとめてあり、完成度の高さを感じさせられました。
これは個人的なわがままですが、コンビニや神社について、いくつかのルートで場所が違うのに同じ写真を使っているのが残念でした。
コンビニはまだいいとしても、神社に関しては、渚と訪れた姫浜神社は特別なものであり、悠里の神社とは別の画像にして欲しかったです。
「システム」面ですが、「NScripter」を使用しており、とても堅実な作りになっております。
以下は本編とは関係ないので、あくまで蛇足ですが、エンディングリストだけ次ページへの移動が左クリックで移動していきます。
この部分も普通に組めたと思うのですが、これはどうしてなのでしょう?
あと、サウンドモードで別の曲を聴こうとした際に、いちいち演奏中の曲を停止してからでないと別の曲を聴けない点も気になりました。
最終的な評価としては、短時間で青春が楽しめる良作だと思います。
個人的には渚ルートがキャラ的にも展開的にもオススメです。
◇Beyond the Summer
作者:あいはらまひろ
シナリオ:19
キャラ:19
CG:16
音楽:15
システム:13
総合点:82「A」
※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。
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