CRIMSON RING 『CRIMSON RING』 (2005.1.10)

 <練り込まれた設定、キャラクター>
全13種類のマルチエンディングを用意した本格派ホラーゲーム。
以前紹介させていただいた「phylector」様の処女作。
あらすじは引用させていただくと以下のような感じです。

高校三年生の市田亮介は、成績、学年トップの優等生。
クラスメートで幼なじみの安里胡桃(あさとくるみ)と、平凡であるが、
楽しい毎日を送っていた。
だが、亮介には、憧れていた女性を失ってしまった
悲しい記憶があり、今もその心の傷により、
恋愛する事を恐れていた。
胡桃は、亮介に気持ちを伝えようとするが、
亮介は固く心を閉ざしたままだった。
そんな中、事件は起こってしまう…

幼馴染である主人公の市田亮介と学校のアイドル胡桃。
彼女は亮介のことを思っているが、亮介は過去の恋愛を引き摺っており、
なかなか一歩を踏み出せない、といった一見すると普通の恋愛ゲームの
ように始まります。

しかし、楽しい雰囲気の裏には非現実的な世界が広がっています。
数年前謎の変死を遂げた父親。それが原因で失踪した憧れの女性。
どうも穏やかな感じではありません。

そして、学校で次々と起こる謎の猟奇殺人。
被害者はすべて胡桃に好意を寄せている男子生徒であり、
その手口は死んだ父親と深い関わりを示唆している。
この殺人の真の意味は? 真犯人はいったい?
と、進めて行くうちのどんどんと引き込まれていきます。

読み手の心を掴む描写はさすがというか、天性の才能を感じます。
また雰囲気に合った「音楽」が更に読み手を興奮の渦に放り込み、
一気にすべてをクリアしてしまわないと気が済まなくさせられます。
これは演出の巧さが為せる業と思います。

「キャラクター」もまた実によく書き分けられており、
個性が滲み出しています。
個人的には桜井が一番良かったでしょうか?
一途に胡桃のことを想っている剛なんかも好きです。
「絵」自体は正直上手いとは言えませんが、逆にそれが
個性的なキャラクターを生み出しているのかもしれません。

最初にマルチエンディングと書きましたが、実はすべてのエンドを
見ていくことで、この物語の真の謎が解けるという仕組みになっています。
個人的にこういう作り方は大好きですので評価は高いのですが、
若干エンド毎に辻褄が合わない部分があり、それが少し気になりました。

「システム」に関しては「NScripter」を使用しており、
デフォルトの機能をそのまま使っています。
タイトル画面での選択肢のレスポンスがやや悪く、そこだけは気になりました。
逆に、起動直後にしばらく放置しておくと伏線とも言えるデモが
流れてくる点は非常に良かったです。


最終的な評価ですが、今回も絵が足を引っ張ってしまいました。
個人的には味が出ていて好きなのですが、もう一踏ん張りできるかな
と思いますので、あえてキツメに書かせていただきます。
また若干描き飛ばしていて唐突に感じる部分があったので、
もう少し描き込んでもよかったのではないかと思います。

「CRIMSON RING」「Succession of the Life」ともに良作ですので、
次回作がどうなるのか何とも楽しみで仕方ありません。

タイトル 作者(敬称略) シナリオ キャラ CG 音楽 システム 総合点
CRIMSON RING phylector 18 18 13 17 14 80「A」
※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。