カレイドスコープ 『カレイドスコープ』 (2004.8.17)

珍しく同人ソフトのレビューを書いています。
自分も同業者なので書きにくい部分もあるのですが、
1プレイヤーとして率直な感想を書きます。

今回はシナリオに重点をおいたヒューマンドキュメンタリーデジタルノベル。
あらすじは、サイトから抜粋引用させていただくと、以下のような感じ。

高校2年生の少女天野めぐみは、真向かいに住む幼なじみの
大学1年生の青年荘野梓や、同級生で親友の八重洲和美と
楽しい毎日を送っていた。
夏休みを前に、「今度の日曜には海にでも行こうか」、
そんな話も弾んでいた…。

めぐみが「生きる力の強さと尊さ」を知り、
成長して行く様子を描いたデジタルノベル。
明日を生きる希望と前へ進む勇気を、貴方へ。

シナリオは、全7章構成。
序盤は普通の恋愛ノベル風に進んでいくのですが、
突如、怒涛の如く奈落の底に叩き付けられ、かなり凹まされます。
どうしようもなく遣り切れない展開な上、キャラ毎の心理描写が
素晴らしくリアリティがある為に、余計に辛いです。
私など、かなりの間ゲームをプレイするのを躊躇してしまう程でした。

しかし、後半では、前半の展開をすべて払拭するような感動を誘う
展開へと進んでいきます。最終的に鬱が残ることはなかったです。
病院など専門分野に関する描写などもおざなりにせずきちんと描かれており、
物語の展開により厚みと説得力を持たせています。
後半への話の持っていき方の綺麗さにはうならされました。

逃げ出したくなるような現実をありありと突き付けられ、
悩み苦しみ落ち込んで、それでも前向きに進んでいこうとする主人公たち。
どこまでも前向きな姿勢がすごい気に入りました。

文体や言葉遣いは、違和感を感じるような部分もなく洗練されています。
ここまできちんとした文体は珍しいくらいです。
ただ、小説としては完成度は高いのですが、ゲームとしてみると
「視点があちこちに移動する(三人称視点)」「一本筋で選択肢が飾り同然になっている」
など気になる点が少々ありました。

絵が書けないから、という理由でキャラクター絵が一切ないのですが、
逆に読み手の想像力を膨らませる形になり、良い効果を与えていると思います。
そして、世界観に合った背景とBGMが更にそれを引き立てています。
また、各章ごとに別のジングルを用意しているなど、
音楽の面でも細かい演出に力が入っています。

キャラクター的には、書き分けがきちんと出来ており、
どのキャラも良い味出していました。
個人的な意見で言わせていただくならば片桐さんがツボでした。
彼のような寡黙なキャラクターは好きですね。

「システム」については高橋直樹氏の「NScripter」をほぼデフォルト使用しており、
特に目新しい点はありません。セーブ数は9つ。
(評価については普通ということで標準の「12」をつけています)

最後に、萌えゲーを求めている方には、全くおススメできないと思います。

タイトル 作者(敬称略) シナリオ キャラ CG 音楽 システム 総合点
カレイドスコープ NaGISA 19 19 15 18 12 83「A」
※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。