ぼたんゆき 『ぼたんゆき』 (2005.1.10)

 <しっとり系の曲で和めます>
今回のゲームは冬の街を舞台とした切ない恋愛ストーリー。
あらすじは毎度のごとく引用させていただくとこんな感じです。

三年前。
六月のある日、降り注ぐ冷たい雨の中で、主人公・浅谷彰はひとりの少女と出逢った。
少女は、冷雨に濡れた彰に傘を差し出す。――その日から、ふたりの時間は始まった。
恋愛でもない、曖昧な関係が続く。
――白く華奢な首筋、 ――濡れたような光を湛えた瞳、
――少女の体は華奢で、まるで硝子細工のようだった。
そして、少女は失われる。
たった一言、救済を求めるがごとき彰への告白と謎だけを残して、
わずか一週間という短いひとときのあと、少女は彰の前から消えた。

そして、三年が経った。

高校生になった彰の前に、失われたはずの少女が現れる。
それは、まるで幻影のように。
二年ごしの告白を果たし、徐々にその時を埋めていく二人。

だが、三年前の真実が徐々に明らかとなっていく。
二年を隔てた他愛ない恋物語の真実とは一体何なのか?
そこには少女の、悲壮な決意が隠れていた。

まず一番に惹かれたのは何とも言っても「音楽」でしょう。
全体的にしっとりとしており、雰囲気だけで言うと
「KANON」を彷彿させられるものがありました。
いかにも冬という感じが出ていてよかったです。

次に「文章」ですが、丁寧に書かれており、非常に読みやすかったです。
ただ、読みやすいのは確かですが、綺麗過ぎると言ったらいいのか、
無機質で淡々とした印象がありました。

また、個人的にキャラに惹かれなかったせいなのか、
それともふたりが恋に落ちる描写がやや不足していたからでしょうか?
主人公の気持ちやヒロイン雪乃の気持ちが入って来なかったです。
特に彰が雪乃を思う気持ちは全く伝わりませんでした。
本当に好きだと思っていたのでしょうか?と感じる程です。

読んでいて伝わってきたのは、全体的に性に関する部分が強く
意識されているな、ということ。
高校生であるのでこんなものなのかな、とも思うのですが、
それにしてもどうにも馴染めない部分があるというか、、、

個人的に一番キャラが立っていたな、と思うのは戸音瑞香です。
何とも生き生きとしていて現実感があり、非常に魅力的でした。
彼女が話に大きく関わってくるのかなとちょっと期待していたのですが、
そういう訳ではなかったので、ちょっと残念です。

エンディングは3種類ありますが、そのうち2種類はいわゆるBADであり、
HAPPYエンドは1種類のみです。選択肢は終盤に少しだけでてくるだけで、
BADを作るために仕方なくいれた感がしました。
下手に選択肢などは作らず、そのまま一本道でもよかった気がします。

「絵」に関してですが、微妙に癖があるようで少し違和感を感じますが、
それでも丁寧&綺麗に描かれており、感触としてはいいと思います。
イベントCGも要所要所に的確に使われており、演出としては
十分に楽しめました。
ただ、立ち絵とイベント絵でキャラクターの絵に随分と差があり、
その辺が気になりました。両者は別の方が描かれているのでしょうか?

「システム」面はお馴染みの「NScripter」を使用しており、
安定した動きをしていました。
クリア後にはCG鑑賞モードと音楽鑑賞モードが閲覧できるようになり、
綺麗な音楽などを楽しむことが出来たのでよかったです。


総括ですが、全体的に実に丁寧に作ってあり、それなりに面白かったのですが、
それでも個人的にイマイチ伝わって来るモノがありませんでした。
各々の作品には必ず「伝えたい何か」があるはずなのですが、
この作品にはそれが感じられませんでした。
他のレビューを読んで見ると高評価の方が多いようなので、
気になった方は実際にプレイして確かめることをオススメします。

タイトル 作者(敬称略) シナリオ キャラ CG 音楽 システム 総合点
ぼたんゆき presto 13 13 15 18 15 74「B」
※各項目は、12点を標準として20点満点で採点しています。